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顧客に響くベネフィットとは?マーケティングで成果を上げる伝え方と事例紹介
マーケティングを担当されている皆様。自社の商品やサービスについて「誰のためになるのか」「どんな場面で役立つのか」、消費者にうまく伝わっていますでしょうか??
マーケティングやPRにおいて、顧客に“何を提供できるか”を的確に伝えることは非常に重要です。その鍵となるのが「ベネフィット」という考え方。単なる機能や特徴の紹介ではなく、顧客が得られる価値を伝えることで、共感や購買意欲を高めることができます。
本コラムではマーケティングのシーンにおけるベネフィットについて、PRへの活かし方などを説明します。マーケティングや広報のご担当者様、販売に携わる営業のご担当者様は、ぜひ参考にご覧ください。
ベネフィットとは?

ベネフィット(Benefit)とは、直訳すると「利益」「恩恵」「便益」を意味する言葉です。経営や人事、マーケティング、医療現場など様々な分野で使われる言葉で、活用されるシーンによって若干意味合いが異なります。日本では単純な金銭的「利益」というよりも、「恩恵」のニュアンスで用いられることが多くなっています。
分野別のベネフィットの意味
様々な分野で使われる言葉「ベネフィット」。具体的には、利用シーンごとに以下のような違いがあります。
- ■企業経営で使われる「ベネフィット」
- 経営や人事におけるベネフィットとは、社員向けの報酬や待遇のことを指し、主に給与以外の諸手当や福利厚生、支援制度などを意味して使われることが多いようです。言い換えれば「社員が享受する恩恵、価値」という意味合いで活用されています。従業員に向けて多くのベネフィットを提供できれば、社員満足度やエンゲージメントを高め、人材流出を防ぐなど会社の利益にもつながります。そのため、各企業は経営の中で授業員向けのベネフィットの充実を図っています。
- ■マーケティングで使われる「ベネフィット」
- マーケティングの文脈で使われるベネフィットとは、顧客や消費者が商品/サービスを利用することで得られる価値、良い結果などを指しています。単なる商品特徴や機能とは異なり、「その商品を使うことでどんな良いことがあるか」という視点がベネフィットです。
- ■医療分野で使われる「ベネフィット」
- 医療業界で使われるベネフィットとは、治療や医療行為を受けることで患者が得られる効果のことを指して使われることが多いようです。症状や痛みの改善、健康リスクの予防など、言い換えれば医療行為によって得られる好ましい影響、恩恵など全般を意味するシーンが多く見受けられます。
このように言葉が使われるシーンで何を意味しているのかは微妙に異なりますが、日本語訳通り、社員や顧客や患者に提供される「利益」「恩恵」のことをベネフィットと言います。
マーケティングで言うベネフィットとは?

ビジネスやマーケティングの現場では、ベネフィットは「顧客に提案できる付加価値」として重視されてます。競合製品も多い市場で自社の商品/サービスを選んでもらうには、単なるスペックや価格の優位性だけでなく、商品で顧客がどのような課題を解決できるのかや、どんな満足感を得られるのかを明確に伝える必要があります。これがマーケティングや営業活動でよく使われる「ベネフィット」の基本的な考え方です。広告や営業活動などでうまくベネフィットを訴求していければ、消費者心理を動かし、より効果的なPRになることが期待できます。
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メリットとベネフィットの違い
「ベネフィット」と似た言葉で「メリット」という言葉があります。これらは類似した意味のため混同されがちですが、マーケティング上では異なる概念として扱われています。メリットは「利点」や「強み」などの機能的な特徴を指すのに対し、ベネフィットは「その特徴が顧客にどう役立つか」という価値に焦点を当てています。マーケティングを行う上ではどちらも重要視されていますが、この違いをしっかり理解して使い分けることはビジネスにおいて成功する第一歩となります。
メリットとベネフィットの違い~具体例~
メリットとベネフィットの違いを具体的に表すと、次のとおりです。
例1 ) ノートパソコン
メリット |
「〇〇mmのコンパクト設計」 「バッテリーが最長◯時間持続する」 |
---|---|
ベネフィット |
「コンパクト設計なのでで持ち運びしやすく作業場所に縛られない自由が手に入る」 「バッテリーが長持ちするので旅先でも安心」 |
例2 ) リュックサック
メリット |
「30L以上の収納力がある」 「ポケットや仕切りが多い」 |
---|---|
ベネフィット |
「30L以上の大容量の収納力で旅先でお土産が増えても安心」 「ポケットや仕切りが多いため整理整頓しやすく探し物ストレスを軽減」 |
ベネフィットは商品特徴によって「お客様がどうなるか」という“価値“や“効果”を伝えるものであり、より感情やニーズに訴える要素であるという点がメリットとの違いです。広告などにおいてはメリットに加えてベネフィットをうまく織り交ぜてメッセージを作れば、ユーザーも生活での利用シーンをイメージしやすく、より魅力的なPRにすることができます。
ベネフィットの種類
ベネフィット、つまり「顧客に提供できる価値」については、マーケティング理論やブランド研究の発展の中でいくつかの種類に分けて考えられるようになりました。
現在では、以下の4つが代表的なベネフィットの種類です。
- ■機能的ベネフィット
- 機能的ベネフィットは、商品の性能や利便性によって得られる実利的な価値のことです。例えば「この洗濯機は洗浄力が高い」「スマホのカメラが高画質」など、何が「できる」ようになるか、何が「便利」になるかなどの要素が該当します。
- ■情緒的ベネフィット
- 情緒的ベネフィットは、商品やサービスを使うことで得られる、感情的な満足感や安心感です。「この化粧品を使うと素肌に自信が持てる」「このゲームで家族との時間が楽しくなる」といった心理の変化が情緒的ベネフィットに該当します。
- ■自己表現ベネフィット
- 自己表現ベネフィットとは、商品/サービスを使うことで自分の内面や価値観、自己イメージを表現できるという便益のことです。ブランド品やデザイン性の高い商品などを買う心理として見られる「これを持つ自分が好き」「周囲にどう見られるか」という観点の便益がこの自己実現ベネフィットです。
- ■社会的ベネフィット
- 社会的ベネフィットとは、商品/サービスを利用することで自分だけでなく社会全体にもよい影響や価値がもたらされることを指します。例えば商品やサービスの利用で「環境が守られる」「地域に貢献できる」など、環境・地域・人々の社会的課題が改善されるという観点で語られます。
ベネフィットが分類分けされるようになった背景の一つとしてあるのは、顧客が商品やサービスから得られる恩恵をより詳細に理解し、それぞれのニーズに合わせたマーケティング戦略を展開するためです。また、強い商品/サービスを作るには、機能的ベネフィットの提供に注力するだけでなく、情緒的ベネフィットや自己実現ベネフィットなどの「感情を動かす価値」も創出していく必要があるという考え方も存在します。
つまり言い換えれば、顧客に対して提供できるベネフィットを様々な側面から検討することが、ブランド価値を高めるために重要と言えます。もし消費者へのPRが物足りない・単一的だと課題を感じている場合は、現在軸として提供しているベネフィット以外にも訴求できる価値はないか、自社商品/サービスの魅力ポイントを今一度洗い出してみるのもおすすめです。
ベネフィットの見つけ方と3つのポイント
商品/サービスのベネフィットを見つけるには、常に「顧客目線」で考えることが重要です。最初は商品やサービスの特徴、スペックなどを棚卸しすることからスタートします。その上で、その商品特徴(スペック)やメリットを出発点にして、「だから消費者はどうなる?」「どのように生活や気持ちが改善する?」と自問しながら、その特徴がもたらす変化や感情を掘り下げていく作業をしていきます。
例えば掃除機を扱っていて「吸引力が強い」という特徴があれば、それを起点に以下のような深堀りができます。
- 例
-
商 品:掃除機
商品機能:吸引力が強い
吸引力が強い→吸引力が強ければゴミを一度でしっかり取れる→ゴミを一度でしっかり取れれば掃除の時短ができる→掃除の時短ができれば自由時間が増える・・・
この際、「家事の時短ができる」「自由時間が増える」などが顧客に提供できるベネフィットとなり得ると言えます。
その他、ベネフィットを見つけるためには3C分析やSWOT分析などを用いて競合他社との比較や強みを整理したり、自社を取り巻く環境(外部/内部)を客観的に見つめ直したりすることも有効です。他社と比べて自社の優れている点がわかれば、広告や営業活動において特に訴求すべきベネフィットが見つかる可能性があるからです。
なお、ベネフィットを明確にするには、以下の3つのポイントを踏襲することをおすすめします。
①ターゲットの特定やペルソナの作成をする
②マーケティングリサーチ(市場調査)を行う
③データに基づき仮説検証していく
具体的に説明します。
①ターゲットの特定やペルソナの作成をする
ベネフィットを明確にするには、自社の商品/サービスは誰に向けて作られたものなのか、ターゲットを定めることも重要です。対象となる顧客層によって、何に価値を感じるかが異なるためです。例えば企業が一方的に「自社商品を使えば時短になる」というベネフィットをPRしたいと思っても、商品を使うメインの顧客層は時短を求めていない可能性もあります。なお、ターゲットを定める際は、ペルソナを作ることをおすすめします。

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「ペルソナ」の設定は、企業が商品開発やPRを行う上で欠かせないプロセスです。顧客や見込み客の悩み・ニーズを正確に把握しながら事業を展開すれば、購入や契約、リピーター獲得等が効率よく進む可能性があります。
ペルソナとは、自社の商品/サービスを利用する代表的な顧客像のことです。年齢や性別、職業、性格、価値観、趣味やライフスタイルなどを具体的に想定した一人を作り上げ、その人に向けたPRをすることがマーケティング上、良しとされています。ターゲット層やペルソナが明確になれば、その人は何を求めているかや、その人にはどういったベネフィットを提供すべきかがはっきりしてきます。訴求すべきベネフィットを定めるためにも、なるべくターゲットやペルソナは具体的に明らかにしておきましょう。
②マーケティングリサーチ(市場調査)を行う
マーケティングリサーチは、アンケートやインタビューなどで顧客の生の声を集め、商品開発やPRに活かす市場調査のことです。商品やサービスが消費者にどんな価値を与えるのかや、顧客が何を求めているかについては、実際のリアルな悩みに即したほうがより顧客目線に立ったベネフィットを検討できます。逆を言えば、リサーチをもとにせず「消費者はこういう課題があるだろう」という思い込みで進めてしまうと、企業の独りよがりな価値を押し付けてしまうことにもなりかねません。可能であれば、リサーチを通してしっかり顧客ニーズを分析した上で、自社で提供できるベネフィットを見定めましょう。
なお、リサーチには協力者や設問など色々な準備が必要なため、早く実施できる方法としてはリサーチ専門会社に外注するのが一番おすすめです。Web検索などで調べてみると複数社ヒットしますので、自社の要望に合う提携先を探してみてください。
③データに基づき仮説検証していく
商品/サービスのベネフィットを定めた上で、それをもとに広告や営業活動をしたとしても、それが本当に世間が求めているものか?どうかは分かりませんし、顧客に提供できるベネフィットは一つではないはずです。そのため、最初に定めたベネフィットに固執せず、顧客の行動や広告などの数字分析で、検証しながら見定めていく必要があります。
例えば広告などにおいては、アピールするポイントを少し変えた広告を複数用意して、どれが効果的かテストしていくことも重要です。例えば「ビタミンC◯mm配合で輝く肌へ」といった訴求と「個包装で使いやすく清潔」といった訴求のように、異なる言葉で広告を出して、どっちの広告に人が多く集まるか?売れ行きが好調か?を比べていきます。このように実際にマーケティングでいくつかのベネフィットを訴求してみることで、消費者の心に響く価値やメッセージを特定でき、自社商品/サービスの真の価値を見出すことができます。
これらの方法を組み合わせることで、ベネフィットをより正確かつ多角的に特定することが可能になります。
ベネフィットをPRへ活かす方法
広告などのPRで成果を出すには、「機能」ではなく「変化」を伝えることがカギです。ベネフィットを中心に、ペルソナが共感できるようなストーリー設計やメッセージ制作を行えば、商品/サービスの魅力をより感情的に訴求できます。例えば広告文で、「〇〇ができる」という表現よりも「〇〇で毎日の生活が楽になる」のような表現のほうがより魅力的に見えるのは、なんとなく分かるのではないでしょうか?そのような考え方をもとに、以下のような構成でLPや広告文を作成していくのが効果的なPRにするポイントです。
PRにおけるベネフィットの使い方
①問題や欲求を提示
②問題や欲求を解決できる商品紹介(メリット/ベネフィット)
③購入/契約への導線

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Web制作や広告業界にいると耳にするLP(えるぴー)。どんなものか分からない、LP自体は知っているけどメリットや役割は具体的に考えたことがない、という方も多いのではないでしょうか。
①問題や欲求を提示
広告の導入では、ペルソナやリサーチなどから抽出された悩みや課題を提示し、ユーザーの共感を得るように設計します。とある家庭用脱毛器のLPを例に見ると、以下の通り。

「毎朝髭剃りの時間がもったいないと感じることはありませんか?」
「肌が荒れたりカミソリの刃でケガしたりすることはありませんか?」
などの部分が導入にあたります。
②問題や欲求を解決できる商品紹介(メリット/ベネフィット)
問題や悩みを訴求したあとに、商品紹介とベネフィットの提示を行います。商品/サービスを使えば生活の課題が解決できると気づいてもらうためのアプローチです。家庭用脱毛器のLPで見ると以下の部分がベネフィットの提示に該当します。
③購入/契約への導線
悩みの訴求で共感を呼び、ベネフィットの提示で商品/サービスを使うことの魅力が十分に伝わったら、購入や契約の意欲を高めることができます。LP構成の定石としては、最後に購入動線を設置します。
なお、LPやWebサイトのように情報をたっぷり盛り込める広告素材では、ストーリー性を持たせながら、じっくりとベネフィットを伝えることが大切です。一方で、バナー画像や数十文字の短い誘導文のような限られたスペースでも、ベネフィットの訴求は十分に効果を発揮します。短いながらも印象に残るキャッチコピーにベネフィットを盛り込むことで、消費者の共感を呼び、クリック率やPVの向上にもつながる可能性があります。ぜひ複数のパターンを試しながら、より響くメッセージやベネフィットの表現を見つけてみてください。

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まとめ
ベネフィットは、商品やサービスの魅力を「顧客目線」で伝えるうえで欠かせない重要な要素です。メリットとの違いを正しく理解し、多角的な視点から価値を明確化することで、より効果的なマーケティングやPR活動へとつなげることができます。もし販売数や広告効果に伸び悩みを感じている場合は、あらためてベネフィットに目を向け、自社商品への理解を深めるところから再スタートしてみるのも一つの手かもしれません。